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年次有給休暇の取扱い

 年次有給休暇を買い上げることは適法であるのか、逆に、行使しなかった年次有給休暇は補償的に買い上げなければならないケースがあるのか、という質問を受けることがあります。

 年次有給休暇の権利(年休権)は、6ヵ月以上継続して勤務し、全労働日の8割以上出勤するという要件を満たせば当然に成立する権利です。労働基準法第34条4に「労働者の請求する時季に与えなければならない」とありますが、この「請求」は休暇の時季(期日のこと)を指定することです。年休権の成立と時季の請求は別のこととされています(二分説)。

 一方、行使しなかった年休権は、消滅します。取得可能となった日から2年の消滅時効がありますので、付与年度の翌年度の末日を過ぎると消滅します。また、雇用関係が終了すると、年休権は消滅します。したがって、退職予定者の年休権は、解雇予告期間中に行使しなければ消滅することとされています。

 本題の年次有給休暇の買い上げとは、労働者が取得しなかった残日数を使用者が一定の金銭をもって買い取り、行使しなかった年次有給休暇に応じ使用者が補償的取り扱いをすることです。

 これについては、「年次有給休暇の買い上げの予約をし、これに基づいて請求しうる年次有給休暇の日数を減じ、ないし請求された日数を与えないことは」違法であるとされています。結果的に未消化となった日数に応じて、手当を(補償的に)支給するのは違法ではない、という意見もありますが、実際上違法であるかどうかの線引きは難しいと思われます。

 したがって、買い上げることができるのは、

  1.   1.法定日数を超える有給休暇を付与しているときの、その超える日数
  2.   2.時効により消滅した日数、および
  3.   3.退職または解雇により消滅する日数

ということになります。しかし、2および3は決して好ましいことではありません。そもそも、年休請求権は、憲法第27条の休息権を具体化した権利であり、労働者の心身の休養と疲労回復を目的とするものなので、休暇を取得することが目的であるからです。

 他方、上記のような趣旨からして、使用者が行使しなかった年休請求権を買い取らねばならないということは、一般的には、ありません。唯一あり得るのは、会社都合解雇の場合に行使できなかった年休請求権を買い取らねばならないか否かですが、上記の通り、労働法制上は、これは要求されていません。

 年次有給休暇の買い上げに関連して、注意が必要なのは、精皆勤手当や賞与の算定上、有給休暇を欠勤として扱うなど取得を抑制するようなすべての不利益な取り扱いは違法とされていることです。

 もう一つは、退職予定者の年次有給休暇の取得を巡る問題があります。なかには、そもそも休暇は労働者の労働力の涵養を目的とするものであるから、雇用契約が終了することが決まっていれば有給休暇そのものが不要であるといって、退職予定者には年休をあたえなくてもいいのではないかという解釈をする経営者の方もいらっしゃいますが、労働基準法は上記のように、年休権は当然の権利とし、使用者には時季変更権を与えているのみです。したがって、会社都合解雇の場合には、解雇予告期間中に年休権を行使できることは疑問の余地がありません。

 ただし、任意退職の場合には、使用者の時季変更権との間で調整が必要になってきます。

 退職日を超えて時季変更権を行使すること(「退職してから休みなさい」ということ)はできないことは通達等で明確にされているが、労働者が、時季変更の余地のない日程で退職を申し入れてきた場合に使用者の時季変更権が制約されていいのかという問題はあります。この場合には、依然として使用者の正当な時季変更権はあるものと解し、これによる労働者の不利益は受容すべきであると考えられます。事業の正常な運営を保持するために必要な範囲で退職予定者の年休の取得が制限されてもやむをえないということになります。

参考文献
菅野和夫「労働法(第6版)」2003年、弘文堂
安西愈「新しい労使関係のための労働時間・休日・休暇の法律実務」2002年、中央経済社

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